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2025/11/19 10:43

なぜブルーチーズは“味の幅”がここまで広いのか


ブルーチーズというと、多くの人が「強い香り」という印象を持っています。


しかし実際には、スパイシーなものから驚くほどマイルドなものまで幅は広く、
同じ「ブルー」でもまるで別物に感じることがあります。



原材料はたった二つ。
乳と食塩だけ。



それでも、ここまで個性が生まれるのはなぜなのでしょうか。



その理由には、目に見えない“自然の要素”と、
静かな手仕事が深く関わっています。




風・湿度・温度──“土地の空気”がつくる香り

青カビが育つには、自然のリズムが必要


ブルーチーズ特有の模様や香りは、青カビの育ち方によって決まります。
青カビは生き物です。風の通り方、湿度、地下室の石壁に残る水分量、
そのすべてに影響を受けます。


例えば、山に囲まれた地域では冷たい風が通り、香りにシャープさが生まれます。
一方で湖の多い地域では、しっとりした湿度が青カビをやさしく育て、
クリーミーでまろやかなタイプができあがります。


まるでワインに“テロワール(風土)”があるように、
チーズにも“空気の個性”があります。






洞窟熟成が生む深い青


フランスやイタリアのブルーチーズには、洞窟で熟成されるものもあります。



洞窟には季節によってゆっくりと変わる温度と湿度があり、
人工的には再現が難しい独特の空気があります。



その静かな環境が、辛み・甘み・香りを何層にも重ね、
複雑で深い“青の余韻”を育てるのです。







ミルクの違いが生む“味の骨格”

放牧の牛と、飼料主体の牛


ブルーチーズの味の土台は、ミルクそのもの。



牛が何を食べて育ったかが、そのまま香りの方向性を決めます。







同じ乳と塩でも、ミルクの“背景”が違えば、まったく別のチーズになります。






季節による香りの変化


春の若草を食べた牛のミルクと、夏の日差しを浴びた牧草を食べた牛のミルク。


ミルクは常に季節に寄り添って変化していきます。


その小さな違いが、ブルーチーズの香りの複雑さを形づくります。





職人の“手をかけすぎない”技術

青カビの呼吸を邪魔しない



ブルーチーズづくりで最も大切なのは、
実は“何をしないか”という判断です。




温度を急に下げすぎない。
風を遮りすぎない。
湿度を人工的にコントロールしすぎない。



自然の流れに合わせ、
青カビがゆっくりと呼吸できる環境を整える。



派手ではないけれど、
この「見守る手仕事」こそ味の決め手です。






香りは“変化の連続”で育つ


青カビは少しずつ成長し、
辛みや香りもゆっくり形を変えていきます。



若いうちは鋭く、時間とともに丸みを帯び、
最後には深い余韻を残す。



ブルーチーズが“大人のチーズ”と呼ばれるのは、
この変化のプロセスを楽しめるからなのかもしれません。







最近は、香りの強いブルーチーズをもっと気軽に楽しめるよう、
一口サイズに砕いた“クランブルタイプ”も増えてきました。


サラダに落とすだけで味が締まり、
パスタやリゾットに混ぜるとコクの層が深くなる。
少量でも存在感があるのがブルーチーズの魅力です。


もし気になったら、Nature Kiosk のセレクトをそっと覗いてみてください。






チーズの個性を知ることは、自然の物語を知ること。
その物語を、これからも静かに楽しんでいただければ嬉しいです。

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