ロワールの風が香る、灰をまとう山羊乳チーズ。

サントモール・ド・トゥーレーヌは、フランス中部ロワール地方で古くから愛される伝統のAOP（原産地名称保護）チーズです。

中世の時代、この地に滞在していたアラブ人が山羊を導入したことが、シェーヴル（山羊乳チーズ）文化の始まりといわれています。

細長い円筒形の中央には麦わら（ストロー）が通されており、これが本物のAOPサントモールの証。 表面を覆う灰（アッシュ）は、山羊乳の繊細な酸味をやわらげ、内部の白い生地にミネラル感と香ばしさを与えます。

口にふくむと、やさしいミルクの甘みとともに、ロワールの草原を思わせる爽やかな香りが広がり、 時間とともにほのかなナッツの余韻が残ります。

「灰をまとう」という独特の製法は、古くからチーズの表面を守り、自然の力で風味をゆっくりと育てるための知恵。 今日でも職人たちは、一本一本手作業で灰をまぶし、やさしい味わいを守り続けています。

——自然と伝統の調和が生み出す、静かな深みのある味わいです。

食べ方・アレンジ提案

・ 薄くスライスしてワインのお供に。
・ はちみつをかけてクラッカーやバゲットにのせると、やさしい甘みが広がります。
・ サラダやキッシュのトッピングに加えれば、香りと旨みのアクセントに。
・ 軽く焼いて温かい前菜に。香ばしい風味と柔らかな舌ざわりを楽しめます。

ペアリング提案

サントモール・ド・トゥーレーヌに合わせるなら、まずはソーヴィニヨン・ブラン。 ロワールを代表する白ワインのキリッとした酸が、山羊乳のやわらかな酸味を引き立て、灰皮のほのかな香ばしさを心地よく締めくくります。

時間とともにやさしいコクが生まれたチーズには、果実味を感じるシュナン・ブランやミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌを。 柑橘や白い花の香りが、まろやかな旨みと重なり、余韻に深みを与えます。

ロゼワインなら、ロゼ・ダンジュのようにやさしい甘みのあるタイプを。 ミルキーで繊細な味わいのチーズに、果実のふくらみが柔らかく寄り添います。

さらに、少し意外な組み合わせとして辛口シードル（フランス産の林檎酒）もおすすめ。 山羊乳の軽やかな酸と、リンゴのフレッシュな甘酸っぱさが絶妙に調和し、アペリティフにもぴったりです。

食後には、ドライなスパークリングワイン（クレマン・ド・ロワールやブラン・ド・ブラン）で爽やかに締めて。 泡が口中をリセットし、チーズの余韻を心地よく次の一杯へつなげます。

——その日の気分と季節のワインで、サントモールの味わいは幾通りにも変化します。

自然とともに味わう、静かな時間。

Nature Kioskは、ワインとチーズを通して「自然に寄り添う食の美しさ」を伝えたいと考えています。

ロワールの風、山羊乳のやさしさ、そして灰をまとう白いチーズの静かな存在感。

それは、自然が描いたひとつの風景のよう。

手をかけすぎず、自然にまかせる。

そんなフランスの食文化の哲学を、そのままのかたちでお届けします。

——自然を味わうこと、それが贅沢。